病院では聞けないお話。
見えない兆しを“未来”に変える
未来のためにできること。それは、いま見えていない“兆し”に耳を澄まし、そこに科学と実践の光を当てることだと思う。
詳しくは👇
https://note.com/fair_stilt779/n/n8499668105f2
「食べる力」は、最初のSOSかもしれない
救命救急医療から高齢者医療に携わる中で、私は何度も「もっと早く気づけたら」と感じる場面に出会ってきた。救急車を呼ぶ前に、何かできたかもしれない。入院ではなく、家で穏やかに過ごせたかもしれない。そんな想いが、私をある視点に導いた——それが「食べる力」という言葉だった。
詳しくは👇
https://note.com/fair_stilt779/n/ne1a7b2a919e3
生きる力ってなんですか?
食べる力
食べる力を数値で見える化し、誤嚥性肺炎のリスクを定量化する取り組みについての記事をアップしました🙂
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急性上気道炎?それとも、どこかの細菌感染?
急性溶連菌感染症が1000人を超えました!RSウイルスが流行!新型コロナが再燃!といった報道がちょくちょくなされています。
今増えてきている、溶連菌感染症。これはコロナやインフルエンザなどのウイルス性感染症ではなく、細菌による感染症です。大雑把に言うと、細菌感染はのど(咽喉)、副鼻腔、肺、尿路といったどこかの臓器にだけ感染するのが普通です。そうした感染臓器を感染源と言い、それを探すことが感染症治療の第一歩です。
溶連菌はしばしば咽喉に感染し咽頭痛が激しいことが特徴です。すぐ近くの前頚部リンパ節まで腫れてしまい、触るとグリグリができていて、押したら痛いのが分かります。その特徴があれば、咽喉を綿棒で擦過する溶連菌迅速抗原テストが有効な手段になります。でも、肺の感染でなければ咳はまずありませんし、鼻腔の感染でなければ鼻水はありません。大事なのは、細菌感染がはっきりすれば、ごく普通の抗生剤が有効だということです。
ウイルスの場合は、場所を限らず色々な部位、例えば、鼻腔から咽喉、肺の近くまで広範囲に広がり、それを総称して『上気道炎』という言い方をします。腸にまで感染すれば下痢を起こし腸炎にもなりますし、普通の風邪でも感冒性腸炎という診断名は、お腹の風邪として知られています。鼻水主体の鼻風邪もお聞きになったことがありますね。
新型コロナも咽喉から侵入することが多く、激しい咽頭痛に遭遇し、何とかしてくれ、と言われる声に随分悩まされました。咽頭痛がひどい点では溶連菌と大差はなく、診断を確定するには、結局はできるだけ感度の高い特定検査に頼る他ありません。咽頭ぬぐい液や唾液に含まれるウイルスのわずかな残骸を転写増幅する点で、PCR検査は最も有力な診断ツールです。一方抗原検査もある程度時間が経ってウイルスが十分増殖しておれば有効ですが、陰性だからといって、その病原体の感染を完全に否定はできない点で劣ります。
一部特異的なもの(伝染性単核症、HIV感染症)以外は、通常何のウイルスが原因かはあまり突っ込んで調べません。インフルエンザと新型コロナまでが普通です。どっちみち薬は同じで、食べて寝て3日もすれば症状は和らいでくるからです。そうではなく、高熱が続く、咳や痰、その上息苦しさまで出てくると、それで初めて重症化や細菌性肺炎を疑う。細菌感染を確実に診断する、細菌になら有効な抗生剤の出番になるからです。
コロナ下の3年間に5500人の患者さんに接し、365日このウイルス感染症に接する未曾有の体験をした結果を次のように3つに総括しています。① 症状は何でもあり得る。高熱、咽頭痛、咳など色々。② 食べて寝て丸3日待ってもらう。特効薬は皆無。③ 細菌感染を見逃さず、直ちに抗生剤を出す。
咽頭痛にはほとほと手を焼き、現時点では桔梗湯、桔梗石膏という漢方薬を愛用しています。元々扁桃腺炎に用いる薬で、これも品薄になりやすいので、薬局やネットで市販のものを買っています。漢方とは決して慢性疾患の薬ではなく、傷寒論(漢方医学の古典)の昔から急性感染症、いわば昔のコロナに対する、先人の戦いの記録が凝縮されていると感じています。
昨日来られた22歳の男性。2日前に喉が痛いと受診され、PCR検査では陰性。ロキソニンとトラネキサム酸(咽頭の浮腫軽減作用があり、風邪一般や咽頭痛に対し頻繁に処方され、一時品薄になった)が毎食後に処方されていました。こないだのヤブ医者じゃねいの?となじり、同伴のお母さんにも悪態をつき、どうやら咽頭痛がかなり辛いご様子でした。
発語も悪態をつくほどで元気。よって呼吸は異常なし。酸素飽和度98%で脈拍数正常。頚部リンパ節の腫れなし。ロキソニンの内服は一旦中止して、2日様子を観ることにしました。ちなみにトラネキサム酸は、元々外傷による出血に対し止血効果のエビデンスがあります。言い換えれば、血管内でも血栓を作らないか若干心配になります(エビデンスはありません)。咽頭痛に特効という印象もないので、個人的にはあまり用いません。ですがこの方は、臭い顆粒は嫌だ、と漢方薬は拒否されました。
それだけ?と思われるかもしれませんが、私たち市井のプライマリーケア医は、危ないものだけ8割がた除外して、あとは『時の助け』を借ります。ただし自然なフェアな経過を観たいと思います。
咽頭痛に対する鎮痛剤ロキソニンは解熱作用も強く、定期内服すると発熱の経過がマスクされて、重症化の判断が遅れないかと懸念しました。呼吸苦、痛み、水分欠乏が尋常でない場合、感染症が重症化する兆候がある場合は、脈拍数が上がります。難しい機序はともかく、病気で身体が酸素を欲しておれば、心臓が頑張り脈拍数が上がるという生体反応と理解しています。それがないならまず様子見。頚部リンパ節の点検は溶連菌感染症が念頭にあるからです。
水面下では色々悩み選択しているという話です。自分療法(セルフメディケーションの自分訳)のご参考になれば幸いです。
怪我と傷。『ほったらかし』の利点。
昔(昭和40年頃)は外で遊んで転んで、手足に擦り傷や切り傷を作ることが割にしょっちゅうありました。それほどやんちゃでもなかった私でも記憶があります。水道で傷口をすすいで、赤チン(マーキュロクロム。水銀を含む製品を規制する水俣条約で2020年12月に製造中止)を膝や肘に塗られていた。ちょっとませてくると、あちこち赤く染まるのが、カッコ悪い、恥ずかしい。そう言うと、代わりにヨーチン(ヨードチンキ)を塗られた。赤チンよりも、傷がしみて痛いから効くんだ、もう大きいんだから、みたいな誇らしげな気持ちも少しあったような。おぼろげに手足が、あの痛みを記憶しています。ざっくり皮膚が裂けていても、同じ対処をされて、『ほったらかし』に見えました。様子を見て、膿(う)んだり治りが悪ければ、病院へ行こうという対応でした。うちは医療機関ではなく、だいたいそんな風潮だったような気がします。
現代でも傷口を洗うこと(洗浄)は基本です。救外ではブラッシングと呼んでいましたが、文字通りこすって砂粒や異物を取り除くことから始めます。自分が痛がりだから、やっててこちらまで痛みを感じるので、こっそり局所麻酔をしてから洗っていました。上司に注意されましたが、別にルールもマニュアルもない時代で、気に留めませんでした。ヒビテンアルコールを混ぜて少し赤くなった水を洗面器に満たしてゴシゴシと洗いました。
ただし、創部(傷口のこと)を消毒・滅菌することについては、今日では有害とされています。アメリカ厚生局公衆衛生局の教えによると、皮膚の下を消毒すると、組織を障害し、壊死・不良肉芽・痂皮の形成を促し、かえって創傷治癒が遅延するのだそうです。ほんの最近まで、患者さんには毎日通院してもらい、創部を熱心に消毒していました。やらないと、逆に消毒もしてくれないというクレームにつながりかねません。さらに感染予防のために、抗生剤を数日内服してもらう、この習慣にも疑問符がついています。エビデンスは伝統的習慣を老害という名で一掃しつつあります。してみると、昭和の民間療法は結構正しかったのかもしれません。
最近はエビデンスなるものを受け売りして、例えば採血前に皮膚を綺麗にするだけの消毒液も一切使おうとしない医療関係者も目にします。エビデンスを狂信せず経験に照らし合わせて、自分で改めて考えることにしています。
創傷が治っていく過程を振り返りますと、縫合をすると大体は48~72時間で創面がひっつき閉鎖されます。その上から消毒するのは確かに意味がない。閉鎖されると滲出液も出なくなるので、ガーゼも必要なくなる。それは尤もだと思います。滅菌した手術用具で、ほぼ無菌状態での手術場で縫合した創部であれば、それで良いとは思うのですが、普通の傷はまた違います。
何が違うかと言うと、『感染を危ぶむ目配り』です。
戸外や普段の生活環境での怪我、普通はそういう創部が一般的です。汚染や異物が入っている前提で、先述の洗浄を行います。流水で十分にできるだけ洗います。生理食塩液推奨ですが、身の回りに普通ありません。流水の圧力は物理的な洗浄効果もあります。床ずれ(褥瘡)も同じですが、壊死組織や異物があると治癒を邪魔する。それらを洗い落とします。ここは理解しやすいですよね。
それでもなお感染する場合はあると思います。人それぞれ免疫力は色々で、ある感染症に罹る方もいれば、平気な方もおられます。自分が糖尿病や肝硬変といった背景をもつなら、人より易感染性(病原体に感染しやすい、感染症が重篤化しやすい)という認識を持つのは有益です。
そこで感染しにくい、感染を見つけやすい状況にしておくことを考えます。例えば、明らかに汚染がひどい傷、半日くらい時間が経った傷は感染のリスクが高い。そこで思い切って縫合せずに、2〜3日開けたまま様子を見ます。これをdelayed sutureとか二次縫合と呼んでいます。大きく開いていない犬猫の咬傷、複雑な洞窟(ポケットと言っています)があるような傷は、あえて切開をして、創を開いて単純化せよ、とまで大昔に教えられました。出口が先に引っ付いたら、異物や壊死や膿(いわゆる、うみ)が外に出にくなる、不利な状況をなくせ!という心です。
一旦順調に見えて、数日以上経ってから、どうも1箇所皮膚のつき(癒合)が悪い、いまだに痛む、といったことがあります。びっくりされるかもしれませんが、縫合した糸が原因で感染し、下に膿が溜まる場合があるのです(縫合糸膿瘍)。こういう場合は治った傷を一部開いて、膿を出さねばなりません。
言い換えると、プロレスや乱闘で作ったような、ぱかっと開いて出血している傷は派手ですが、早く処置できれば対処が楽です。出血が多いことは血行が良い証拠で、血行の良し悪しは治癒の決定的要素です。ですが、そのままでも開いたままでも、意外に治ってきます。生き物の再生治癒能力は驚異的です。何かで被覆して湿潤にする(『ラップ療法』で検索して下さい)のは有効ですが、蛋白合成が正常であれば、いわば勝手に治る、ちょっと手助けをする位でほったらかしにします。縫合して綺麗に治そうという観点とは真反対ではありますが。
意外に思われるかもしれませんが、伝統的なガーゼは意外に創部を擦過する影響があり、擦れるたびに痛みます。組織を障害もしているのではないかと危惧します。滲出液(しんしゅつえき、創部からしみ出す体液や一部は膿)を吸収する目的なら、ソフトタッチで摩擦も少ない、尿パッドや女性用のパッドの能力は絶大です。創部にポンと貼るだけ。悪臭がない限り数日でも交換しなければ、自然に湿潤環境になり、上皮化(皮膚形成)に有利です。いい加減に処置されたと言われそうですが、その点を払拭する説明をしておきます。
それほど滲出液がなく、創部が平坦な場所なら、市販の透明のシール( アルケアマルチフィックスロールテープ(商品名言ってしまいます)を貼っておけば、創部表面の摩擦がなくなります。接触による痛みもなく、創部の観察も容易な点で、褥瘡や表皮剥離に愛用していますが、効果に驚きます。結局、何もしない『ほったらかし』のがいいの?これらは非医療用品の市販品なので、価格が安いことも有利な点です。自己療法(セルフメディケーション)には必携の商品だと、在宅療養の皆さんにお勧めして、漏れなく好評を博しています。
治癒が遅い、1〜2週間で治らない場合、何か邪魔をしている原因があるはずと考えて観察をする。稀ながら命に関わる物として、ガス壊疽とか激症型溶連菌感染症が上がると思います。これらは医師でもそれほど経験するものではありません。結局は治癒が遅い、他に原因がないのに全身状態が悪い、ことに気づくことからが、スタートです。
とりとめない話になりましたが、日々発見がある創傷についてのお話でした。
レントゲンの要らない骨折の見つけ方
日常怪我をして皆さんがまず心配するのは、骨は折れていないか、です。骨が折れてないことが分かればホッと胸を撫で下ろします。折れてるかどうかをすぐに知りたいから、レントゲンを撮ってもらいに走る。骨折はありませんという一言が欲しいために、物凄く痛いのを何とか我慢して、何がなんでも今すぐ病院に行きますよね。
折れた骨が皮膚を突き破っている時、下から皮膚が盛り上がる、骨がポッキリと折れて大きなズレ(転位)がある時。言われなくとも迷わず病院に行きますよね。どんな時にすぐ受診が必要で、セルフメディケーションは限界と判断するのかが、ここでも最も重要です。
患部より先の方がしびれている時、皮膚の色が悪い時も超緊急です。早期に元通りに整復し、副え木(シーネ)で良い位置を保っておく必要があります。神経や血管に損傷が予想される場合で、神経損傷や血行不全で取り返しのつかないことになるかもしれません。また、指、脚、腕の関節の骨折は悪くすると動かせなくなるので、関節をスムースに動かせない時は、これも準・緊急。いずれも整形外科に即受診の一択です。
さてじゃあ、どういった時に急がなくていいのか、ですね。たとえば細いガラスの花瓶にヒビが入ったような、骨の表面(骨膜)に傷が走ったり、骨膜の一部に凸凹ができた程度。まだ若く柔らかい木がぐにゃっと曲がるような、その名も若木骨折。骨膜をよくよく観ると段差はできているが、大半は繋がっている骨折。これらは緊急度がぐっと下がります。この種の骨折かもしれない、それすらない場合がここでのテーマです。
まず、すぐにレントゲンを撮っても、初めのうちは見えない骨折があるのです。少し経てば自然修復して骨ができてきて(化骨形成)、後日レントゲンを撮って初めて分かる骨折です。それと、患部の腫れは数時間後からひどくなり、数日経てばひいてきますから、その時点でギプスを巻くとしっかりとフィットします。怪我の後あまり早い時期にギプスを巻くと、後で腫れがひどくなって、ギプスががきつくなり、圧迫で血行が悪くなることがあります。その場合ギプスを切って外さねばなりません。カッターで切るのが揺れて痛い!だから、超緊急のケース以外は急いでもあまりいいことはないのです。
それでは、この種の骨折をどうすれば見つけられるのでしょうか?骨は表面の骨膜が傷ついて痛みを発します。表面から痛みが伝わるのです!ただ骨折ではない靭帯や筋肉だけの損傷(捻挫や肉離れ)でも、痛みそのものはそれ程差はありません。一体どこが違うのか、目の付け所をお話しします。
骨は1本の棒、または丸いか四角いかのブロックみたいな塊です。骨のどこか一部が傷つくとしますね。もちろん傷ついた患部は痛みます。そこ触らないで!という状態です。じゃあ、この痛む患部を避けて他の所をぐりぐりと押したり揺らしたりしてみます。骨折が疑われる患部から離れた場所に重みや圧力をかけるのです。具体的には骨の端っこを揺らしたりすると、患部に圧力振動が伝わって、やはりすごく痛いのです。そんなことしたら響く!と言われます。それならその患部は骨折です、おそらく。これを介達痛(かいたつつう、indirect pain)と呼び、骨折の特徴として役に立ちます。
怪我をした方の片足で立ってみる(荷重と言います)。踵から膝、股関節まで体重がずっしりかかります。もし折れていたら痛くて体重を支えられません。腰骨(こしぼね)、背骨(せぼね)が折れた!と思ったなら、寝返りや屈伸運動をしてみて下さい。折れてたら、痛くてやれたもんじゃありません。逆にできたならまず骨折ではないでしょう。ちなみに背骨は手術もコルセットも致しません。薬物による痛みの軽減だけになります。
酷い捻挫や肉離れでも骨折の介達痛に似た特徴はないとは言えません。それならば、まず3日待ってみましょう。痛みが引いてくる、鎮痛剤をそれ程必要としなくなる、先述の介達痛を再度調べたら、あれ?痛くない、ならば骨折の可能性はぐっと低くなります。念のための受診なら、痛くなくなってからレントゲンを撮れば、微妙な骨折はすでに化骨形成が見えて、治り始めていることもあります。
長くなりましたが、① 超緊急だけを見極める、② 介達痛(痛くないはずの患部から離れたところを押したり揺らすと患部に響く現象)、③ 時間経過で痛みが軽減 がポイントです。本当の骨折なら4日目でも痛みは続きます。それと鎮痛剤は惜しまない。毎食後、(就寝前も)気にせず服用しましょう。胃が悪くなったりしません。痛い時に鎮痛剤を節約すると、ストレスにもなるし、血圧が上がり、食事も十分にできません。便秘になることもありますよ。動かさないと筋肉が弱り痩せてしまいます。むしろ痛みをしっかり無くして運動も食事もなるだけ落とさない方がずっと大事なことなのです。
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#3 最強の尿検査を利用しましょう。
口渇甚だしく、排尿回数多きもの『消渇(しょうかち)』という病名で古く漢方で知られていた糖尿病。尿に蟻が群がったり、尿を舐めて甘みがあれば、消渇を疑ったとも言われています。中世には、尿を見て、病状だけでなく運命まで占う専門業者が居たとか。実は、歴史上、最も古くから行なわれてきた臨床検査の基本は、「尿検査」だったのです。精密検査の現代においては検尿の価値は一見下がったように見えます。
さて、今や国内約1300万人が抱える病、慢性腎臓病(CKD)は世界的にも増加しています。糖尿病性腎症(DKD)・急性腎障害(AKI)などの診断にも、尿検査はたいへん有効です。また先頃、ある会社の紅麹製品による健康被害が報道されましたが、腎障害を疑う症状のひとつが“泡立つ尿”だったことをご存じでしょうか。
小学校で泥水を濾紙で濾す(こす)と下のビーカーに綺麗な水が溜まった実験に感動した思い出はおありでしょうか。単純に言うと腎臓は小さな濾紙とビーカーの球(糸球体と呼ばれています)が無数に詰まった塊と考えて下さい。濾紙が穴だらけだとビーカーに溜まる水つまり尿に、普通は出ない物質が出てきます。異常を尿検査でまずキャッチできれば、腎臓の最も大事な機能『糸球体濾過能』をチェックする一つのきっかけになります。
糖尿病、非常に多い膀胱炎、腎臓尿管膀胱の癌、過度なダイエット、熱中症などで起こる脱水症など、様々な病気を疑う最強のツールです。
最新の精密な検査は診断を確定することが目的です。但し先に病気を疑い、精密検査が利用されるきっかけが必要です。たとえば症状の現れていない方に対し、体中をくまなく検査して病気を見つけることは困難です。いつでも、どこでも、何度でも、繰り返し、簡単に試せる、安価である、リスクがない、不快感がないという点でも、尿検査は最強であると思われませんか。
是非あなたの健康維持のために取り入れてみませんか。非常に奥が深い尿検査をご一緒に学びながら、お一人お一人の健康管理を行っていく『オンライン尿検査サービス』もご用意しております。お待ちしております。
番外補編#1 とんでもない痛み。
前回の、#15 便秘を自分で診る では腹痛の多くを占める便秘のセルフメディケーションをお話ししました。ところが、それどころではない七転八倒の とんでもない痛み がこの世にはあるんです。それを知っておいて下さい。比較的多い代表的な痛みは、胆石症と尿管結石症によるものです。
さて、正式名、胆嚢結石症という名の通り、胆嚢の中に石の塊ができて起こります。右の肋骨の下(みぞおちから肋骨に沿って右に寄った)あたりに、ギューと差し込むようなちょっと違う痛みが出ます。でも、みぞおち、背中、おへそ、肩、腰と違う場所が痛むこともあります。
便秘でも、下腹部だけでなく右上やみぞおち、おへそあたりが痛むことはあります。じゃあ、便秘じゃなくて胆石かもしれないじゃないですか?間違っていたらどうするのですか!というご不満を述べられるかもしれません。
もちろん!そうかもしれません。水分を十分摂り、お風呂に入り、カイロでお腹を温めて、排便があってすう〜と痛みがなくなれば、便秘だったんだ、とその時点で確信できるのです。腹痛は便秘のことが圧倒的に多いですよ、それから除外していきましょうという意味なのです。
それと、もしも熱が出ると、これは危険サインです。便秘では普通それはありません。セルフメディケーションはそこまでと撤退を判断するのがポイントです。
肝臓で作られた胆汁は胆嚢という筋肉の袋に一旦濃縮貯蔵されています。食べ物特に脂ものが胃に入ると、胆汁は細い管を通って絞り出されて、胃の続きの十二指腸へ送り出されます。胆石が胆汁の出口を塞ぐと、絞り出せなくなり内圧が上がり、ここで痛みが出ます。これは便でいっぱいになった腸が便を押し出そうとして、痛みが出るのと似ていますね。
毎度みぞおちの右辺りだけが痛む、食べたら痛み出す、熱も出てきた。他には、黄色から緑の色の胆汁は、便を黄色に着色します。胆汁が流れないと、なんと!便が白くなるのです。全然流れないと、顔や白目が黄色くなります(黄疸)。これはもはや病院の出番です。超音波検査ですぐ分かります。
2つめの尿管結石症、それこそ痛いなんてもんじゃありません、と経験者は語ります。大の男が脂汗を流して苦しみます。それを小耳にはさんだ傍の女性に言わせれば、お産 の痛みに比べたらまだまだ、男は情けない、とのこと。腎臓で作られた尿は尿管という細い管を通って膀胱に届けられます。この尿管は背中側を下に走行していますので、石で流れが止まるとやはり尿管が激しく収縮拡張する。それで背中や下腹部が激烈に痛みます。
ギザギザした石が細い尿管の中をあっちに当たりこっちに当たり落ちていくので、尿管に傷がついて、尿中に目に見えない血が混じるのも特徴です。尿を採って血が混じってるかどうかは、実はお家でも検査できます。ともかく飲み物をたくさん摂って、尿の流れを増やして、石を膀胱まで運んでゆくまでは痛みと戦わなければいけません。
このように見ていくと、便、胆石、尿管結石が流れを遮断すると、それを出そう出そうと、腸管、胆(のう)管、尿管がひとりでに収縮拡張する。そのために痛くなるというわけです。この種の痛みを和らげるには、一時的に収縮を抑える薬、強力な鎮痛薬が必要です。時には、芍薬甘草湯(こむらかえりの特効薬)が効くことがあります。但しです。
とんでもない痛み は、深追いしてはいけません。排便があっても治らない、熱が出てきた、見えない血尿が危険のサインです。診察でも時に分かりにくい、腸間膜動脈血栓症 という腸が壊死する怖い病気もあります。このセルフメディケーションを撤退する勘所を押さえることが、セルフメディケーションの極意かもしれません。
